意匠制度の基本情報

意匠出願が初めての方に、意匠とは何か、意匠権を取得するメリット(特許との違い)、登録に必要な要件を分かりやすくご案内します。

1.意匠とは

2.意匠権取得のメリット

3.登録要件

 

1.意匠とは?

☆意匠とは、物品及び建築物の形状・模様・色彩又は画像に関するデザイン(外観)のことをいいます。中でも物品においては、洋服、車、机、傘、ボールペン、携帯電話機などから、くぎ、フライパン、乾電池、糸、ケーキに至るまで、様々な商品のデザインが意匠法の保護対象となっています。

 

■こんなものも意匠法で保護されます

  • 食べ物(ケーキ、あめ玉、固形カレー、すし等)
  • 事務用品(消しゴム、画びょう、黒板等)
  • 印刷物(書籍、ちらし、切符等)
  • 乗物(飛行機、漁船、トラクター等)
  • 建築用部材(柱、ふすま、カーテンレール、鬼がわら等)
  • 基礎製品(糸、鎖、くぎ、ビニールテープ等)
  • 組立て家屋、屋外装備品(浴室、バルコニー、門、鳥居、電話ボックス、郵便ポスト)
  • 不動産(建築物、内装)
  • 画像(操作画像、表示画像)

 

■こんなものは意匠法では保護されません

  • 無体物(花火等)
  • 固体以外のもの(電気・光・液体・気体等)
  • 肉眼で見えない粉状物・粒状物
  • 物品から離れたモチーフ(ロゴマーク・タイプフェイス等)
  • 外部から見えない内部構造
  • 絵や彫刻といった純粋美術に属する著作物

 

☆また、物品・建築物の全体のデザインだけでなく、物品や建築物の部分のデザイン(コーヒーカップの持ち手部分等)も意匠として登録を受けることができます。

☆さらに、完成品(自転車等)だけでなく、その部品(自転車用ペダル等)も、独立して取引の対象となるものであれば、意匠登録の対象となります。

 

 

2.意匠権取得のメリット

意匠権者は、独占的に登録意匠及び登録意匠に類似する意匠の実施をすることができます。

すなわち、他人が登録意匠やそれに類似する意匠の実施行為を行った場合には、その実施行為の中止を求める差止め請求や、その実施行為によって被った損害賠償の請求をすることができます。登録意匠の範囲だけでなく、登録意匠に類似する意匠の範囲にまで効力が及びます。また、侵害品の輸入に対しては、輸入差止めを求めることもできます。近年は、パッケージや製品から商標を削除した形態の模倣品や、非類似の商標を付した類似品が多く日本に輸入されるようになっており、これらは商標権のみでは差し止めをすることができません。そのような場合に、形態についての権利を意匠権で取得しておれば、巧妙な模倣品に対しても輸入差し止めを求めることが可能です。

登録までの期間が特許に比べて短いこともメリットの一つとなります。例えば特許ではファーストアクションまで平均で9.5カ月となっており、審判の審理期間は平均で12.5カ月となっていますが、意匠はファーストアクションまで平均で6.0カ月、審判の審理期間は6.7カ月です(2019年現在。特許行政年次報告書 2020 年版より)。たとえば、特許出願から意匠出願へ変更すれば、特許出願後に明らかになった他社の侵害品に対して特許権の登録よりも早く意匠権に基づく権利行使が可能となります。

 

 

3.意匠の一般的な登録要件

出願された意匠が登録を受けるためには、以下のような要件を満たす必要があります。

(1)意匠法で保護される意匠であること

物品のデザインであっても、以下のものは意匠法上の意匠とはいえず、意匠登録を受けることができません。

<意匠法上の意匠とはいえないもの>

①物品と離れたデザイン(タイプフェイス、標識、キャラクター、花火・噴水等などの無体物)

②物品等自体の形態等でないもの(カップに入れたカフェラテのラテアートの模様など)
※但し、販売を目的とした形状についても、当該形状を維持することができるものについては、物品等自体の形状として取り扱われます。

③固体以外のもの(電気、光、気体、液体等)
※但し、屋内外の照明器具や、自動車のテールランプなどの物品で、点灯部を点灯させることにより物品自体に模様又は色彩が表れる場合は、当該模様や色彩についても意匠構成要素として取り扱われます。

④肉眼で見えないもの(塩、砂糖等)
※但し、塩や砂糖を一塊の型に成形し、肉眼で見えるものについては、意匠として取り扱われます。

なお、意匠法上の建築物に該当するための要件及び、意匠法上の画像に該当するための要件については、「建築物・内装デザインの保護」「画像デザインの活用」をご参照ください。

 

(2)工業上利用することができる意匠であること

工業的(機械的、手工業的)生産過程を経て反復生産され、量産される物品のデザインであることが必要です。

<工業上利用できる意匠に該当しないもの>

①自然物を意匠の主たる要素として使用したもので量産できないもの
  [例]自然石をそのまま置物としたもの

②純粋美術の分野に属する著作物
  [例]絵、彫刻

 

(3)今までにない新しい意匠であること(新規性)

出願前にそれと同一又は類似の意匠が存在しないことが必要です。

<新規性がない意匠>

①意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠

②意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠

なお、自らが公開したような場合であっても、新規性を喪失したものとなり、新規性喪失の例外の規定の適用を受けなければ、登録を受けることができません。

出願前に、それと同一又は類似の意匠が存在していないことが必要です。

■新規性のない意匠の例

  • 他人又は自己によって既に博覧会やパンフレット、ホームページ等で公開された意匠
  • 他人又は自己によって既に販売されている意匠
  • 上記のような意匠に類似する意匠

 

(4)容易に創作をすることができたものでないこと(創作非容易性)

創作性が低い意匠は、意匠登録を受けることができません。

<創作非容易性がない意匠>

①置換の意匠
公然知られた意匠の特定の構成要素を当業者にとってありふれた手法により他の公然知られた意匠に置き換えて構成したに過ぎない意匠

②寄せ集めの意匠
複数の公然知られた意匠を当業者にとってありふれた手法により寄せ集めたに過ぎない意匠

③一部の構成を削除した意匠
意匠の創作の一単位として認められる部分を、単純に削除したに過ぎない意匠

④配置の変更による意匠
公然知られた意匠の構成要素の配置を当業者にとってありふれた手法により変更したに過ぎない意匠

⑤構成比率の変更又は連続する単位の数の増減による意匠
公然知られた意匠の全部又は一部の構成比率又は公然知られた意匠の繰り返し連続する構成要素の単位の数を当業者にとってありふれた手法により変更したにすぎない意匠

⑥公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合をほとんどそのまま表したにすぎない意匠

⑦商慣行上の転用による意匠

 

(5)先願意匠の一部と同一又は類似の意匠でないこと

先に出願され、登録になった意匠の一部と同一又は類似する意匠は新しい意匠を創作したものとはならないため、意匠登録を受けることができません(ただし、同じ出願人である場合には例外があります)。

 

(6)公序良俗に反する意匠等でないこと

以上の要件を満たす意匠であっても、公益的理由などから、次の意匠は登録を受けることができません

①公序良俗を害するおそれのある意匠
  [例]元首の像、国旗などを表したもの

②他人の業務に係る物品と混同を生ずるおそれのある意匠
  [例]他人の著名な商標を表した意匠

③物品の機能を確保するために不可欠な形状若しくは建築物の用途にとって不可欠な形状のみからなる意匠又は画像の用途にとって不可欠な表示のみからなる意匠
  [例]コネクタ端子のピンの形状のような標準規格となる形態

 

(7)他人よりも早く出願したこと(先願)

同一又は類似の意匠についてニ以上の出願があった場合、最先の意匠登録出願人の出願のみが登録となります。

※但し、同一の出願人が関連意匠制度を利用した場合には、後願の登録が可能です。

 

 

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