産業財産権と存続期間の関係

産業財産権法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)は、単に権利の保護を目的としているだけではなく、産業の発達も目的としています。例えば、特許権で言えば、新しい発明をした人に、一定期間、その発明を独占する権利を与える代わりに、世の中にその発明を公開し、その発明を利用した産業が発達することを目指しています。したがって、一定期間経過後は皆でその発明を利用できるように、特許権者が独占できるのは一定期間に限られているのです。

ただし、商標権のみ更新が可能であり、更新を繰り返すことで、半永久的に商標権を存続させることができます。これは、商品やサービスにつける名前は長く使えば使うほど、そこに信用が蓄積され、ブランドとしての価値が増していくにもかかわらず、一定期間に限ってしまうとその蓄積された信用が無になってしまうからです。そうだとすれば、商標権は、初めから存続期間を定めずに、一度取得すれば永久に存続するものとしてもよさそうですが、それはそれで、無用な商標権が世にあふれてしまうことにもなりかねないので、とりあえずは10年とした上で、希望する場合にだけ、更新すれば引き続き使えるようにしているのです。

以下、意匠権の存続期間についてその概要をご説明します。

意匠権の存続期間について

意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間

関連意匠の意匠権を除いた通常の意匠権の存続期間の終期は、意匠法21条1項に「意匠権(関連意匠の意匠権を除く。)の存続期間は、意匠登録出願の日から二十五年をもつて終了する。」と規定されています。

意匠には流行によって移り変わってゆく非常に短期間の生命しかないものもありますが、輸出用の食器類などには長い間世界各国の人々に愛好されているものも少なくありません。

意匠は、発明同様、創作物を対象とするものではありますが、発明は、あまりに長期間の独占権を与えることにより、技術開発を通じた技術の向上を阻害するおそれがあるのに対し、意匠は、審美的な観点から保護されるものであるため、存続期間を長くすることによる弊害は比較的小さいものと考えられます。

外国の立法例も意匠権には通常15年以上の存続期間を認め、例えば、EUでは最高25年の保護が与えられています(平成30年末日現在)。

また、意匠権とある点で共通の性格を有する著作権は、ベルヌ条約加盟国においては著作者の死後50年以上存続しなければならず(日本では著作者の死後70年存続)、商標権は何回でも更新することができる永久の権利と考えられています。

このような事情から、旧法では設定登録の日から10年であった意匠権の存続期間が、昭和34年制定の現行法において15年に延長、平成18年の一部改正において20年に延長され、権利の保護が強化されました。

令和元年の一部改正においては、近年意匠登録出願と特許出願の変更出願が増加する中、存続期間の終期の起算日が、意匠権では設定登録時、特許権では出願時と異なることに起因して、知的財産権の管理上不便が生じるおそれがあることから、特許と同様、意匠権の存続期間の終期の起算日が出願時に変更されました。

また、企業特有のデザインコンセプトの開発を支援し、ブランド価値の向上を促進する観点からは、より長い意匠権の存続期間を設定することが望ましいことから、意匠権の存続期間を「設定の登録の日から二十年」から「意匠登録出願出願の日から二十五年」に変更する改正が行われました。なお、登録時でなく出願時に統一された理由は、特許については意匠とは異なり、出願後に特許庁による実体審査を受けるか否かを判断できる審査請求制度(特許法48条の2)が採用されていることに起因します。

関連意匠の意匠権の存続期間

関連意匠の意匠権の存続期間の終期は、意匠法21条2項に「関連意匠の意匠権の存続期間は、その基礎意匠の意匠登録出願の日から二十五年をもつて終了する。」と規定されています。

関連意匠制度は、平成10年の一部改正において、デザイン開発の過程で一のデザインコンセプトから創作されたバリエーションの意匠については同等の価値を有するものとして保護し、各々の意匠について権利行使することを可能とすべく、改正前の類似意匠制度に代えて導入されたものであります。

本意匠とその関連意匠の意匠権については権利の重複部分が生じることとなることから、関連意匠の意匠権は、関連意匠の意匠権の設定の登録が本意匠の意匠権に遅れた場合でも、権利の重複部分に関して権利の実質的な延長が生じないようにするために、関連意匠の存続期間の終期は本意匠の設定登録の日から起算する旨、平成10年意匠法の一部改正時に新設・規定されました。

その後、令和元年意匠法の一部改正(2020年4月1日施行)において、意匠権の存続期間を意匠登録出願の日から25年に変更したこと、また、本意匠のうち最初に選択されたものを「基礎意匠」と定義したことに伴い(意匠法10条7項)、関連意匠の意匠権の存続期間については、基礎意匠の意匠登録出願の日から25年とする旨の改正が行われました。

ただし、本意匠の意匠権が、存続期間満了以外の理由、すなわち、①意匠権の放棄(意匠法36条において準用する特許法97条1項)、②登録料の不納付(意匠法44条4項)、③無効審決の確定(意匠法49条)を理由として消滅した場合については、本意匠と関連意匠の整理が便宜的なものであり、各々の意匠が同等の創作的価値を有することを踏まえ、関連意匠同士の関連性は維持しつつ、関連意匠の意匠権は存続するものとされています。

改正関連意匠制度については以下のページもご参照下さい。
・「関連意匠制度の活用

登録料(年金)の納付

権利維持を希望する場合は、登録日を年金納付起算日として、第2年以後の各年分の登録料(年金)を前年以前に納付する必要があります。

旧法下では、1~3年分の登録料を査定又は審決が確定した日から30日以内に納付すべき旨規定されていましたが、意匠には流行によって左右される短期間の寿命しかないものも相当にあり、一度に三年分の登録料を徴収するまでのこともないと考えられ、意匠権の設定の登録の際にも一年分の登録料を納付すればよいとされました。その反面、特許料や実用新案の登録料の場合のように資力を考慮した納付の減免又は猶予(特許法109条、実用新案法32条の2)は認められていません。

また、特許権は、設定登録後、より長い期間にわたって権利が維持・活用されることで、より多くの利益を享受することが期待されていることから、維持期間の初期の特許料については権利維持の妨げとならない程度の金額に設定し、利益が増加するに従って特許料の金額を高くするという負担の容易性を考えた累進性を政策的に採用しているのとは対照に、意匠権は、技術ではなく美的な物品のデザインに対して与えられる権利であることから、権利を早期に手放すことを促進する政策的必要性は特許権に比較して強くないと考えられたため、四年目から二十五年目までの登録料(年金)は同額に設定されています。

■追納制度

登録料(年金)を前年以前に納付することができないときは、期間経過後6月以内に追納することができます(44条1項)。この場合、登録料のほか、登録料と同額の割増登録料を納付する必要があります(44条2項)。追納期間内に登録料及び割増登録料の納付がないときは、意匠権は、原則として、当初の納付期間の経過の時に遡って消滅したものとみなされます(44条4項)。

■自動納付制度

なお、設定登録後の登録料(年金)は自動納付制度の対象となっています。これは、登録料の納付時期の徒過による権利失効の防止を目的に平成21年1月1日から導入されたものであり、「自動納付申出書」を特許庁に提出することにより、申出人の予納台帳又は指定銀行口座から登録料が徴収され、登録原簿に一年ごとに自動登録されます。この制度を利用することにより、権利者は納付期限を心配することなく、また個別の納付書の作成等の手間を省いて権利を安全に維持・存続させていくことが可能になります。

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