意匠と特許の違い

例えば、新しい商品を開発して、特許出願を検討するとき、意匠登録出願もしたほうが良いのか悩ましいこともあるかと思います。

特許、意匠どちらで権利化すべきか、両方で権利化可能か、特許と意匠の違いについて解説します。

ポイント

  • 特許は、技術的思想の創作が保護対象。意匠は、物品等の美的外観が保護対象。
  • ある物品の形状が、技術的効果もあり、美的な外観でもある場合、特許権、意匠権の両方で保護が可能。
  • 特許出願のみ行った場合でも、要件を満たせば特許出願を意匠登録出願に変更が可能。
  • 特許に比べ、意匠は、審査が早い、存続期間が長い等のメリットがある。

意匠と特許で異なる点

保護対象

特許:自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの。
※物の発明、プログラムの発明、方法の発明、物の生産方法等。発明の概念を文章にして保護。
意匠:物品の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合、建築物の形状等又は画像であつて、視覚を通じて美感を起こさせるもの。
※物品、建築物、画像其々の部分も保護される。目に見えるものが保護対象であり、外観に現れない概念的なものは保護できない。図面等に表れた物の同一・類似の範囲が保護される。技術的な新規性が無くても外観が新規なら保護される。

  • ①特許権、意匠権いずれでも保護されるもの
    意匠と特許はともに新規性が登録要件の一つであり、創作の保護という観点において共通しますが、特許は技術的思想の創作が保護の対象であり、意匠は物品等の美的外観が保護の対象です。よって、ある物品の形状が、技術的効果もあり、美的な外観でもある場合、出願人の選択により特許、意匠いずれでも出願することが可能であり、特許権と意匠権の両方を取得することにより多面的に保護することが可能です。
    なお、意匠法では物品の「美的外観」が保護されるのですが、装飾的な要素や美しいと感じるかどうかまでは求められていません。よって、特許法の保護対象となっているような、美的装飾がない産業機械などであっても外観に新規性があれば保護され得ます。

    特許権は、外観が非類似でも、技術的効果が同一であれば権利が及ぶ為、権利範囲が広いと言えます。
    意匠権は、外観が同一・類似であれば権利が及び、外観が非類似であれば技術的特徴が同一であっても権利が及びません。しかしながら、関連意匠や部分意匠を利用することにより権利範囲を広げることができ、また一般的に特許よりも登録可能性が高くなっております。

  • ②特許権で保護されるが、意匠権で保護されないもの
    発明は、物の発明と方法の発明に分けられます。
    物の発明の場合、その物の外観に特徴がある場合、その外観について意匠権で保護することが可能です。
    他方、方法の発明の場合、物の発明と異なり、方法自体は物の形状等でないため意匠の保護対象ではなく、意匠権で保護されません。
    方法の発明の例:使用方法、測定方法、検査方法、製造方法等

  • ③意匠権で保護されるが、特許権で保護されないもの
    ある物品の美的外観は意匠権で保護されますが、その物品の形状に技術的効果がない場合は、特許権で保護されません。
    例えば、椅子の形状や模様などは意匠権で保護されますが、その形状に技術的効果がなければ発明には該当せず特許権で保護されません。

審査請求制度

意匠:なし(審査請求しなくても実体審査が開始される)
特許:あり(出願日から3年以内に審査請求が必要)

出願公開制度

意匠:なし(登録されるまで公開されない)
特許:あり(出願後1年6カ月で公開される)

審査期間(ファーストアクション期間) ※2020年

特許:約10か月(審査請求~最初の審査結果通知)
意匠:約6か月(出願~最初の審査結果通知)

存続期間

特許:出願日から20年
意匠:出願日から25年

1出願に含められる範囲

特許:複数の実施形態が考えられる外観的特徴を1出願にまとめて出願できる。
意匠:1意匠1出願。複数の形態があれば関連意匠出願や部分意匠出願を利用する。

意匠特有の制度

部分意匠(物品等においてデザイン上の特徴がある部分について意匠登録を受けることができる)
秘密意匠(意匠登録日から3年間に限り意匠公報に意匠の内容を掲載しないことを請求できる)
関連意匠(自己の出願意匠・登録意匠(本意匠)に類似する意匠を関連意匠として登録できる)

<出願の変更>
費用の関係等で特許、意匠のどちらか一方のみを出願する場合、いずれが有利であるか判断が困難な面もあることから、出願形式の選択を誤ることもあり得ます。そのような場合、要件を満たせば、特許出願を意匠登録出願に変更することも、また意匠登録出願を特許出願に変更することも可能です。

特許出願から意匠登録出願への変更のメリット

  • 出願日の遡及
    出願日が特許出願日に遡及するため、特許出願後に公知になっていた場合でも、登録を受けることができます。

  • 特許に替わる権利化
    特許出願では新規性や進歩性がなく拒絶になった場合に、外観に新規性があれば意匠登録出願に変更することで権利化することができる場合があります。

  • 特許権と意匠権とで多面的に権利化
    特許出願後に、デザインにも保護すべき価値が生じた場合など、もとの特許出願を残しつつ、分割・変更を利用することで、特許権と意匠権とで多面的に保護することができます。

  • 早期権利化
    特許での権利化に時間を要する場合に、意匠に変更すると、早く権利化できるというメリットがあります。他社に特許出願に係る製品を実施されていて、外観が類似している場合等、権利化を急ぎたい場合に有益です。

【参考】実用新案登録出願から意匠登録出願への変更も可能です。商標登録出願は、特許出願又は意匠登録出願に変更することはできません。

最後に

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