新規性喪失の例外手続きについて

意匠について登録を受けようとする場合、当該意匠は新規性・創作非容易性を有している必要があります。

よって、意匠出願より前に公開された意匠は原則意匠登録を受けることができません。
しかしながら、出願準備が間に合わず、先に展示会で公開してしまった場合や、インターネットで販売を開始し、意匠を公開してしまった場合などの非常手段として、新規性喪失の例外規定の適用を受けることが可能です。

新規性喪失の例外規定の適用を受ければ、特許庁に提出する証明書に記載した公開の事実によっては、出願意匠が新規性・創作非容易性を理由に拒絶されません。

■意匠公報、特許公報、外国公報などの公報に掲載された意匠は、例外規定の適用を受けることができません。
■優先権のように出願日 (判断基準日)が遡及するわけではないので、出願前に、第三者がその意匠やそれに類似する意匠について公開又は出願をすると、意匠登録受けられないこがあります。
■国によって新規性喪失の例外規定(グレースピリオド)の内容が異なるため、日本で新規性喪失の例外の適用を受けて意匠登録を受けても、海外では新規性を喪失したとして、意匠登録を受けられないことがあります。(例:インド、中国、マレーシア、ベトナムなど)

新規性喪失の例外適用を受けるための要件
新規性喪失の例外規定(意匠法第4条第2項)の適用を受けるためには、以下(1)から(3)の全ての要件を満たすことが必要です。
(※意に反する公開(同法第4条第1項)についての説明はここでは割愛します。)

(1)意匠登録を受ける権利を有する者(意匠の創作者又はその承継人)の行為に起因し て、その意匠が以下の①又は②の意匠に該当するに至ったものであること。

 

① 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠。

② 意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠 又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠。

 

(2)上記(1)の意匠について意匠登録を受ける権利を有する者が、意匠登録出願をしてい ること。

(3)上記(1)の意匠が初めて公開された日から1年以内に意匠登録出願されていること。

※(出典)特許庁 意匠審査基準

具体的な手続き
新規性喪失の例外の適用を受けるためには、以下(a)~(c)の手続きを行う必要があります。
(a) 意匠の公開日から1年以内に意匠登録出願をすること。
(b) 意匠登録出願時に意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けようとする旨を記載した 書面を提出すること。   (願書に【特記事項】の欄を加え、当該規定を受けようとする出願 である旨を明記することで代用可能。)
(c)  意匠登録出願の日から30日以内に、意匠の新規性喪失の例外規定の適用の要件を満たすことを証明する書面を提出すること。

(出典)意匠の新規性喪失の例外規定についてのQ&A 令和2年12月 特許庁

証明書には、
①意匠が公知になった日、②公開された場所(インターネットであればURL)、③公開者、④公開した意匠の内容を記載し、公開された意匠と出願人、公開者の関係などを記載します。

なお、2024年1月1日以降の意匠出願については、意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して公知意匠に該当するに至った同一又は類似の公開意匠が複数ある場合、それぞれの「公開の事実」を証明せずとも、最先の日に行われたもののいずれか一の行為について「証明する書面」に記載されていれば、その日以降に公開した同一又は類似の意匠についても新規性喪失の例外規定の適用が受けられるようになりました。

よって、以下の図において、Aの公開のあと、Aに類似のA’を公開した場合、Aについて証明書を提出すれば、A’についての証明は不要となります。

※(参考)特許庁 意匠審査基準R5.3

※関連意匠出願をする場合は忘れずに、新規性喪失の例外規定の適用を受ける必要があります。

※(出典)特許庁 意匠審査基準

アドバイス
出願前についうっかり意匠を公開してしまった場合でも、1年以内であれば登録を受けられるチャンスがあります。 当所にご相談頂ければ、弁理士が公開の事実や権利の承継の内容、公開した意匠と登録を受けたい意匠の関係などのヒアリングを行ったうえで適切な証明書を作成致します。また、外国出願を希望される場合も国によってはグレースピリオドが設けられていることもありますので諦めずにご相談ください。

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