主な出願国と外国意匠制度(US)

1.保護対象と存続期間、審査期間

主な出願国と外国意匠制度(US)

(1)「意匠特許(Design Patent)」

独立した意匠法はなく、特許法の中で「意匠特許(Design Patent)」として規定されています。一部の規定を除いて特許法の規定がそのまま適用されます。

出願書類には、特許のように「クレーム」(単一クレーム)を記載し、類似意匠があれば「実施例」として記載します。

(2)「意匠」の定義

「製造物品のための新規で独創的かつ装飾的な意匠」と定義されています。建築物やアイコン等も保護されており、日本より「意匠」の概念は広くなっています。また、新規性や非自明性のほか、装飾性も登録要件となっています。

(3)存続期間

意匠登録日から15年間保護されます。

(4)審査期間

平均8~12か月

 

 

2.新規性と非自明性、グレースピリオド

(1)新規性(Novelty)

平均的な看者が感じる全体印象が、有効出願日(現実の出願日または優先日)前の公知意匠と同一の場合、新規性が無いとして意匠登録を受けることができません。物品の分野は類似する必要はありません。

(2)非自明性(Non obviousness)

日本の創作非容易性に相当する規定です。出願意匠と先行意匠との差異が、当該意匠分野において通常の知識を有する者にとって自明であるか否かが判断されます。

(3)グレースピリオド

日本の新規性喪失の例外に相当する規定です。創作者が自ら意匠を開示した場合でも、特に手続きをしなくても有効出願日(優先権主張の場合は優先日)から1年間は「猶予期間」として意匠出願、登録が可能です。

特に有効出願日から適用されるため、日本での出願日前1年以内の開示行為にも適用されるので、日本より広く新規性喪失の例外が認められます。

 

 

3.多意匠一出願

一つの創作概念に含まれる場合、一出願に複数の意匠を実施例として記載することができます。日本で関連意匠として出願した意匠があれば、実施例として一出願に含めることができる場合があります。また、全体意匠とその一部である部分意匠が一出願で実施例として認められる場合もあります。

意匠の権利範囲は日本と比べて狭いと考えられますので、実務的には、実施例を多く入れて権利範囲を広げていくことが重要です。

一意匠に含むことができる意匠の判断基準は不明瞭で、審査官の主観によるところが大きいと思われます。一出願として複数意匠を出願し、単一の創作概念の要件を満たしていないと判断された場合は、審査官から限定要求がなされ、出願意匠を限定、分割する対応が必要になる可能性があります。一方、類似する意匠を別出願した場合は、非自明性を理由としたOAが出る可能性があります。この場合は一出願に補正することはできないので、ターミナルディスクレーマ(後願の存続期間の満了日を先願と同じにする)の対応が必要になる場合があります。

 

 

4.全体意匠と部分意匠

米国にも部分意匠制度がありますが、日本の場合と異なり、出願後に全体意匠から部分意匠に補正することができます。また、部分意匠の意匠登録を受けようとする部分の変更補正が可能です。

意匠の一部の形状が不明瞭としてOAが出た場合、当該不明瞭な部分を破線にして部分意匠とすることによって拒絶理由を解消することができる場合があります。

 

 

5.願書の記載

米国では、意匠は特許法で保護されていますので、特許と同様に「クレーム」(単一クレーム)を記載しなければなりません。

クレームの記載例

  The ornamental design for a camera, as shown and described.

 

 

6.図面(drawing)について

①6面図と斜視図

意匠の外観を完全に開示するために十分な数の図面を提出する必要があります。原則として正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図及び底面図を提出し、立体意匠の場合には、他に斜視図を提出することが推奨されています。

②断面図

斜視図や後述する陰影等により外観の凹凸が表現できる場合は、断面図の提出は控えます。断面図も権利解釈の対象となるので、断面図を加えると権利範囲が狭くなる可能性があるからです。

③陰影

外観の凹凸や透明等を陰影により表現します。

④参考図

参考図も権利解釈の対象となるので、参考図を提出する場合は慎重に検討する必要があります。

⑤写真・CG

原則、線図の提出が必要ですが、線図で表現できない等の特別な事情がある場合に限り、申請により写真・CGの提出が認められます。写真またはCGで出願した場合、権利範囲が狭くなるおそれがあるので、事情が許すなら図面で出願する方が望ましいと思われます。特にカラー写真等で登録された場合、権利範囲はその色に限定されます。

図面と写真、または図面とCGのように組み合わせたものは認められません。

⑥同一性判断について

初めから米国出願が予定されている出願については、日本出願時から米国の規定に合わせて図面を作成しておくことが望ましいのですが、そうでない場合は出願前に検討が必要です。図面を修正すると意匠の同一性が認められなくなって優先権主張できなくなるおそれがあるからです。米国出願するときに米国の規定に合わせて図面を修正しておくべきか、あるいは拒絶理由を受けた場合に図面を修正するべきかを考えなくてはいけません。米国では、意匠の同一性の判断は、優先権主張の判断時には比較的緩いと思われますが、補正時には厳しいと思われますので、出願時に図面を修正しておいた方が良いと考えられます。

 

 

7. IDS(Information Disclosure Statement;情報開示陳述書)について

米国では,意匠の発明者,出願人等は,その者が知っている先行意匠に関する情報を USPTO に提出する義務(情報開示義務)があります。したがって、日本をはじめ他国での審査において示された引用文献等をIDSとして提出しなければなりません。出願人が登録性の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる先行文献等の存在を知りながら、それを提出しなかった場合、非衡平行為(inequitableconduct)であるとして,登録されても権利行使ができなくなるおそれがあります。

IDSは、出願後3月以内に提出した場合は料金がかかりませんが、それ以降は料金が必要となります。最初の拒絶理由通知が示された後等には IDS の提出が認められない可能性がありますので、外国での審査の状況を常に監視して,そこで引用された先行意匠情報をすみやかに提出できるよう気をつけなければなりません。

 

 

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