意匠出願は意匠ごとにしなければならないと規定されており(意匠法第7条)、原則1つの出願には1つの物品しか含めることができません。
つまり、まったく異なる複数の物品や、機能的・形態的一体性がないのに分離した物品が願書に記載されている場合、通常登録は認められません。

ただし、例外的に複数の物品を含む意匠の登録が認められていて、それが「組物の意匠」です。

組物の意匠とは?

組物の意匠は、例えば一組の食器セットのように、通常同時に使用されるもので、全体として統一的なデザインが施されていることから、セットとして登録が認められる意匠のことです。

具体例としては、以下のような登録があります。

一組の机セット
(意匠登録第1571916号)
一組の応接家具セット
(意匠登録第1674724号)

一組の飲食用スプーン、フォーク
及びナイフセット
(意匠登録第1626598号)
一組の自動車用フロアマットセット
(意匠登録第1554784号)

これらの例では、図面の中に分離している複数の物品が含まれていますが、それぞれ「一組の〇〇セット」といった物品名となっている通り、組物の意匠として登録が認められています。

組物の意匠として認められるための条件は?

組物の意匠として認められるための意匠法上の条件は以下の通りです。

(1)経済産業省令で定める組物の意匠に該当すること

組物の意匠として認められる物品は、経済産業省令であらかじめ決められていて、別表としてまとめられています。例えば、「一組の食品セット」や「一組の楽器セット」などがこの表に記載されています。この表に記載されているセットのいずれにも該当しないセットは、組物の意匠としては認められません。

意匠法施行規則別表、意匠に係る物品等の例(旧意匠法施行規則別表第一・別表第二)

(2)同時に使用される二以上の物品、建築物、画像であること

同時といっても、一連の使用の範囲内で用いられるものであれば問題ありません。
例えば、スプーンとナイフとフォークは、3本同時に手に持って料理を食べることはありませんが、食事という一連の使用の範囲内では3本とも使用するのが通常であることから、この条件を満たすのだと考えられます。

(3)組物全体として統一があること

以下のような場合には、統一があると判断されます。

・形状等が、同じような造形処理で表されている場合
一組の飲食用容器セット
JPO意匠審査基準より
・組物全体として一つのまとまった形状又は模様が表されている場合
一組の家具セット
JPO意匠審査基準より
・形状等によって、物語性など組物全体として観念的に関連がある印象を与えるものである場合
一組の飲食用容器セット
JPO意匠審査基準より

組物の意匠のメリットは?

組物の意匠として登録することのメリットは、セットとしての特徴を権利化できることにあります。組物の意匠においては、統一的なデザインが施されているという特徴が考慮されるため、他社が、その特徴を模倣したセットを販売していれば、その他の部分の形状等を多少変更されても、権利行使をすることができる可能性があります。

以下の図のように、柄の部分に統一的なデザインが施されているナイフとフォークセットの場合を考えます。
意匠(形状等)の類否判断においては、両意匠の構成や、類否判断のポイントとなる要部などの認定がおこなわれ、それらを比較の上で、両者の美感が共通するかどうかで類否が判断されます。
組物の意匠の場合、上述の通り、組物全体として統一があること等を条件に、登録が認められていることから、統一的なデザインが施されているという特徴も、類否判断において考慮されます。
その結果、以下の例では、柄以外の部分のデザインが多少異なりますが、統一的なデザインが共通するため、類似の意匠と判断される可能性があると考えられます。

組物の意匠 模倣品
JPO図面の手引より一部改変

なお、令和元年の法改正によって、組物の部分についても意匠登録が認められるようになったので、上記例では、柄以外の部分を破線で表して登録することも可能です。

一方、単独で意匠権を取得した場合は、例えば以下の図の例では、柄の部分のデザインは共通していますが、柄以外の部分のデザインは異なっています。
統一的なデザインが施されているという点は考慮されないため、上の例に比べると、類似の意匠と判断される可能性は低くなると考えられます。

単体の意匠 模倣品
JPO図面の手引より一部改変

組物の意匠の注意点(デメリット)は?

これまでにご説明した通り、組物の意匠は、通常の意匠登録とは異なり、セットとして例外的に登録を認めるものです。そのため、以下のような点に注意が必要です。

セットの一部の実施には権利が及ばない

組物の意匠はセットで登録が認められているため、意匠権もセットとして生じています。
そのため、組物の意匠は、単体の物品の実施には権利が及びません。

例えば、「一組の食器セット」として意匠が登録されている場合、意匠権が生じている物品はあくまで「一組の食器セット」です。対して、他社が「カップ」のみを単独で販売等している場合、実施している物品は「カップ」です。
意匠の類否は、形状等が似ているかどうかの前に、物品が似ているかどうかがまずは判断されます。
「一組の食器セット」と「カップ」は非類似の物品と判断されます。
そのため、この「カップ」の形状が、「一組の食器セット」の中の一部のカップと同じだとしても、物品が異なることから非類似の意匠であり、権利が及びません。

あとからセットの一部の意匠を権利化できなくなる

意匠の出願前に既に公開されている意匠については、新規性がないとして、意匠登録を受けることができません。
セットを販売等した場合、公開がされたことになるため、それ以降はセットの一部のみを出願しても、原則登録されません※。

※自らの公開から1年以内に、所定の手続きをして出願すれば、例外的に新規性が認められます。(新規性喪失の例外)
詳しくは以下のページでも解説しています。

新規性喪失の例外手続きについて

また、販売等の公開をしなくても、組物の意匠について、意匠登録がされて公報が掲載されれば、この場合も公開に該当します。

そのため、製品を販売したり、組物の意匠として出願した場合、その後セットのうちの一部の物品だけを権利化したくてもできなくなる可能性があることに注意が必要です。

戦略的な出願を

上記のように、組物の意匠は、統一的なデザインを施しているという特徴を権利化できるというメリットがありますが、単体の意匠には権利が及ばないというデメリットもあります。

意匠を出願する際には、他社にどのような模倣をされる可能性があるかどうかも考慮し、その模倣品に権利行使ができるかどうかなどの戦略的な観点から出願方法を検討されることをお勧めします。

例えば、システムキッチンなどは、セットで販売されるのが通常で、一部の棚などが単体で模倣され、販売される可能性は低いと考えられますので、組物の意匠として出願するのが適していると考えることができます。
対して、食器セットなどは、セットの内、カップや皿などが単体で販売される可能性が高いと考えられます。このような場合は、上述のデメリットの通り、組物の意匠では単体の意匠には権利が及びませんので、カップ等の単体での意匠出願も検討する必要があります。

※組物の意匠出願をし、組物の意匠として適切とみとめられたものについては、分割出願が認められません。即ち食器セットを組物の意匠で出願したあと、カップのみを分割出願できないので注意が必要です。

最後に

当事務所は、特許だけでなく意匠や商標などの知的財産について包括的に取り扱う弁理士事務所として、組物の意匠を含めた様々な形態の意匠について、お客様の業界や事情に合わせた戦略的な観点からアドバイスを行います。
意匠出願をご検討の際は、是非一度当事務所までご相談ください。
御見積もりは無料で承っております。「お問い合わせフォーム」などからお気軽にお問い合わせください。

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