拒絶理由通知書への対応

1.拒絶理由通知書とは

意匠登録出願をした後、方式的な審査を経て、特許庁の審査官が審査基準に沿って登録要件を全て満たしているか否かについて審査が行われます。主な登録要件は以下の通りです。

■主な登録要件
・意匠法で保護される意匠であること
・工業上利用することができる意匠であること
・今までにない新しい意匠であること(新規性)
・容易に創作をすることができたものではないこと(創作非容易性)
・先願意匠の一部と同一又は類似の意匠でないこと
・公序良俗に反する意匠等でないこと
・他人よりも早く出願したこと(先願)

詳細は、以下リンクをご参照ください。
  意匠制度の基本情報>3.意匠の一般的な登録要件

いずれかの登録要件を満たさないと審査官が判断した場合、即座に登録できないと決定されるわけではなく、「拒絶理由通知書」が出願人宛てに発行され、説明や反論、補正(修正)の書類を提出する機会が与えられます。

「拒絶理由通知書」を受け取ったまま、何も対応しなければ、その後、拒絶査定が送付され出願した意匠は登録ができなくなりますので、登録を希望する場合には、拒絶理由通知書に対して応答することが必要になります。

2.拒絶理由通知の応答期間

拒絶理由通知書は、発送日から40日(在外者は3月)以内に応答期間が設定されます。

応答期間の延長について

何らかの理由で期限内の応答が難しい場合には、出願人が国内居住者か在外者かを問わず、期間延長請求をすることで応答期間の延長をすることができます。

期間延長請求で延長される期間は2か月で、応答期間の末日の翌日から2か月後が、延長後の期限日として設定されます。延長請求に係る特許庁費用(特許印紙代)は、応答期間内に行えば2,100円であり、応答期間経過後の場合は7,200円(※1)です。

※1…協議指令の応答の場合は、4,200円です。

延長請求の理由は問われませんので、うっかり失念していた場合でも期間延長請求は可能です。

3.拒絶理由毎の応答について

拒絶理由の内容は、拒絶理由通知書の[理由]の下に記載されています。その理由を踏まえて、意見書にて説明や反論したり、手続補正書にて願書の記載事項や図面を補正したりすることになります。作成した意見書や手続補正書を審査官が確認し、拒絶理由が解消されると審査官が判断した場合には、登録査定を受けることができます。

願書の記載事項や図面等の補正に関する注意点

補正により、その意匠の属する分野における通常の知識に基づいて当然に導き出すことができる同一の範囲を超えて変更する場合や、出願当初不明であった意匠の要旨を明確にする場合、意匠登録を受けようとする範囲を変更する場合には、意匠の要旨を変更するものとして、その補正が却下されることに注意が必要です。
出願時の図面等を補正するケースは、要旨変更に該当する可能性が高いため、出願前の検討が大変重要になります。

≪要旨変更となる補正の具体例≫
・願書における記載(物品名や説明)の追加、変更をする補正
・図面において新たな構成を追加したり、構成の一部を削除したりする補正
・部分意匠の図面において実線部分(意匠登録を受けようとする部分)を変更する補正

≪要旨変更とならない補正の具体例≫
・願書の記載における軽微な不備(誤記等)の訂正
・図面の一部に欠落があり、図面間の整合を図ることを目的とした補正

※上記具体例はあくまでも例示であり、実際に要旨変更にあたるかどうかは個別に判断する必要があります。

同一又は類似の意匠について、同日出願があった場合には

①同一人による意匠登録出願の場合
 協議指令と同時に拒絶理由通知書が通知されます。
 同一又は類似の意匠について、同日出願があった場合には、原則どちらか1つしか登録することはできないため、出願人同士で協議が必要となりますが、出願人が同一人の場合、協議のための時間は必要ないと考えられるためです。
 登録する意匠をいずれか一つにし、他の意匠を放棄・取下するか、もしくは、一の意匠を本意匠として協議指令の対象となった意匠を関連意匠に補正することで拒絶理由は解消されます。
 例えば、出願人が関連意匠制度を利用せずに、類似する複数の意匠を独立した意匠として出願した場合に発せられます。

②他人による意匠登録出願の場合
 各意匠登録出願人に協議指令が通知されます。
 この場合、各出願人が協議するための期間が設定されます。その期間内に協議の結果の届出が提出されなければ、協議不成立として、拒絶理由通知書が各出願人に送付されます。なお、協議指令の期間についても、期間延長の申請が可能です。

≪協議指令への対応≫
協議指令があった場合には、原則、協議の結果の届出の提出が必要です。協議対象となった意匠出願について、出願放棄や出願取下、補正の手続きが行われても、それによって協議が成立したとはみなされず、指定期間の満了まで審査は留め置かれることになります。協議の結果の届出をすることにより、審査を速やかに進めることができます。
※①同一人による意匠登録出願の場合でも協議の結果の届け出が必要です。

≪協議不成立の場合≫
・協議不成立のまま、拒絶理由通知書の応答期限を経過した場合には、登録ができないと判断され拒絶査定を受けます。その後、協議指令の対象となった各意匠登録出願の内容は、協議不成立意匠出願公報として、公開される点に注意が必要です。
・協議不成立の意匠を公開したくない場合には、拒絶査定を受ける前に出願放棄や出願取下の手続きをする必要があります。

関連意匠(意匠法第10条第1項)に関する拒絶理由通知について

出願した意匠が、願書に記載した本意匠とは類似しないと、審査官が判断した場合に通知されます。意見書にて、関連意匠の要件を満たしていることを説明し、それが認められれば、拒絶理由は解消します。なお、拒絶理由がこの理由だけの場合には、願書の本意匠の表示の欄を削除すれば、登録は可能です。ただし、本意匠と関連意匠とした出願時の意図が蔑ろになってしまわないかどうか、検討した上で対応することをお勧めします。

4.応答費用について

・意見書や手続補正書での応答には特許庁費用(特許印紙代)は不要です。期間延長請求時には上述の所定の費用が掛かります。
・応答手続きを弁理士や特許事務所に依頼する場合には、通常は、応答手数料が掛かります。

5.ご相談・お問合せください

上述の通り、拒絶理由の内容によって必要な対応が異なり、審査官への説明や反論には専門的な知識や経験が必要な場面が多くあります。対応によっては、権利範囲に予期しない悪影響を及ぼすことも考えられます。

当事務所の経験豊富な意匠専門の弁理士やスタッフが、内容の説明や適切な対応の提案を通して、安心できるリーガルサービスを提供いたします。

拒絶理由通知書の内容や応答に関するご相談がありましたら、「お問い合わせフォーム」にてご連絡いただけますと幸いです。

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