(1)はじめに

日用品はスーパー、ドラッグストア、コンビニ、百貨店といった店舗のみならず、インターネットを通じたオンラインショッピングを提供する事業者により、時間や場所を問わず、いつでも購入できる身近な存在です。

外国人旅行者においては、「健康グッズ・トイレタリー」が買物における購入商品のトップ10にランクインするなど(観光庁「2019年訪日外国人消費動向調査」)、引き続き不動の地位を占めております。

日用品はトイレタリー用品、衛生用品、洗剤、風呂・台所用品等の家庭用日用品等広範にわたり、各製品には様々なデザインが施されています。そのデザインが新規なこと、視覚を通じて美観を起こさせるものであること等、所定の要件を満たすことにより意匠登録を受けることができ、独占・排他的にそのデザインを実施することができるようになります。事実、日用品は分野別出願状況※で意匠出願全体の13%を占めており、多くの意匠登録が存在しています。

”HARAKENZO more では、諸外国からも高く注目されている日本の日用品について、消費者の購買意欲をさらに高め、販路拡大を目指す日用品業界の皆様を応援したいと考えております。当記事が日用品の分野で意匠出願を考えていらっしゃる方のお力になれれば幸いです。

分野別出願状況  出典:意匠の審査基準及び審査の運用~令和元年意匠法改正対応

(2)日用品の意匠について

意匠とは、物品等の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいいます。

ここで、「日用品に美感?」と思われるかもしれませが、美術品のように高尚な美を要求するものではなく、何らかの美感を起こすものであれば足ります。

例えば、外国人にも人気の高い、トイレタリー商品を例にとってみましょう。以下、「電気歯ブラシ」を事例としてご説明します。

(3)全体意匠について

電気歯ブラシに表わされたデザインが、視覚を通じて美観を起こさせるものであることのほか、工業的方法により量産し得るか、新規なデザインであるか、容易に創作できるものではないかなど、様ざまな要件を総合的に判断して意匠登録を受けることができるか判断されます。

Cグループ(家庭用保健衛生用品)
(コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ 登録意匠1428281号)

(4)「部品」の意匠について

交換可能な部品については、別途意匠登録出願をして意匠登録を受けることができます。

例えば、ブラシと本体が分離できる電気歯ブラシである場合、ブラシと本体それぞれについて意匠登録を受けることができます。これにより、電気歯ブラシ全体の意匠だけでなく、歯ブラシ部、本体部それぞれの部品のみについても独占・排他的な実施ができるようになり、第三者による代替品販売を抑制する等、電気歯ブラシの意匠をより強固に保護することができます。

Cグループ(家庭用保健衛生用品)
右(コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ 登録意匠1432629号)
左(コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ 登録意匠1428280号)

(5)部分意匠について

物品全体の意匠やその物品の部品について意匠登録を受けても、特徴のある細かい部分について、他社にデザインを模倣されたくない場合があります。

例えば、電気歯ブラシの操作用パネルが独創的で特徴がある場合、これらの部分についても独占・排他的に実施したい場合を考えてみましょう。

意匠権の効力は、電気歯ブラシ全体、歯ブラシ部、本体部について意匠登録を受けている場合、それぞれ同一又は類似の物品に対してのみ及ぶので、操作用パネルには及ばない可能性があります。つまり、他社が生産している電気歯ブラシに、自社の電気歯ブラシの操作用パネルがそっくり取り込まれているけれど、電気歯ブラシ全体又は本体部でみたら、他社と自社の意匠が非類否である場合、他社の模倣を防ぐことができない状況が生じ得ます。

そこで、部分意匠制度の利用をご紹介します。電気歯ブラシの操作用パネルの部分を、下図のように実線で表して特定し、意匠に係る物品を「電気歯ブラシ」として意匠登録を受けることができます。これにより、全体の形状が類似していない電気歯ブラシについても、この操作用パネルの意匠権の権利が及ぶことになります。

部分意匠制度を活用して、独創的で特徴のある日用品の部分の意匠を、他社による模倣から有効に保護することができます。

Cグループ(家庭用保健衛生用品)
(デンティスト アールエックス エルエルシー 登録意匠1420529号)

(6)その他の意匠登録制度

一つのデザインコンセプトから生まれたバリエーションの意匠について意匠登録を受けたい場合は、関連意匠制度を利用することができます。

例えば、電気歯ブラシの充電器の意匠について出願又は登録を受けている場合に、後からそのバリエーションの意匠について出願したい場合など、先に出願した意匠を本意匠、後から出願した意匠を関連意匠として出願することができます。

これにより、バリエーションの意匠(関連意匠)についても、その元の意匠(本意匠)と同様に、意匠権による保護が受けられます。なお、意匠権の効力は、本意匠と関連意匠ともに同等です。

         [本意匠]                  [関連意匠]

Cグループ(家庭用保健衛生用品)
左(オムロンヘルスケア株式会社 登録意匠1530156号)
右(オムロンヘルスケア株式会社 登録意匠1530409号)

[Point]
2020年4月1日に施行された改正意匠法では、基礎意匠※の出願日から10年以内であれば、基礎意匠の関連意匠及び当該関連意匠に類似する意匠を出願することが可能になりました。改正後の関連意匠制度について詳しくはこちらをご確認下さい。
※最初に本意匠として選択した一の意匠を「基礎意匠」といいます (意匠法第10条第7項)。

(7)”HARAKENZO more は日用品業界の皆様を応援します

日用品業界は、独自のデザインで他社製品との差別化を図るとともに、生活用品として日々の生活に彩りを加えるすばらしいものです。一方、知的財産で適切に保護されていないと、そのデザインをマネした海賊版が簡単に流通してしまい、水際対策に追われることになってしまいます。また、上記の様に、意匠登録件数が多い分野であるので、自己のデザインの実施が他社の権利侵害となるリスクも高くなります。
そのため、皆様が知的財産権の問題を意識せざるを得ない状況に直面することもあろうかと思います。”HARAKENZO more では、日用品業界の皆様の知的財産保護に全力を尽くす体制を整えております。どうぞお気軽にご相談ください。

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意匠登録や意匠トラブルの解決にあたっては、専門家の判断が欠かせません。
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