ハーグ協定による国際意匠出願について

2017年05月09日更新
2018年09月10日改訂

1.ハーグ協定とは

ハーグ協定とは、各国別に発生する出願手続きを一元化し、国際事務局への一つの出願手続で、指定した国それぞれに出願した場合と同等の効果を得ることができる意匠の国際出願・登録システムです。

商標や特許の国際出願制度と比較すると、このハーグシステムは、基礎出願・登録が不要なマドプロ/国内移行がなく指定国を出願時に決定するPCT出願と言い換えることができます。

2018年8月時点では、日本、EU、韓国、米国を含む66の国と政府間機関がハーグ協定に加盟しています(ジュネーブ改正協定には54の国と政府間機関が加盟)。中国、イギリス、ロシア、ASEAN(シンガポール、ブルネイ、カンボジアは加入済み)は、加盟検討中です。日本は、2015年5月13日に加盟の効力が発効いたしました。

2018年にはカナダの加盟が正式に決定し、発効日である同年11月5日よりカナダを指定したハーグ出願が可能となります。

WIPO発行の「Hague Yearly Review 2017」によると、2016年のハーグ出願件数は、2015年と比して35.3%増の5,562件となっており、日本や米国、韓国等の加盟もあり、順調に増加しております。ハーグ出願では、最大100意匠までを1出願として扱うことができるメリットがあり、下記図1のとおり多意匠を含んだ意匠出願が世界的な流れとなっていることが分かります。

 

グラフ

(WIPO:『Hague Yearly Review 2017』より)

 

 

2.ハーグ協定による国際出願の手続きの流れ

ハーグ図3

(JPO: “意匠の国際出願に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく国際出願の手続” より)

 

 

国際出願

保護を希望する意匠・国等を記載した出願書類をWIPO国際事務局へ提出。

・マドプロ商標とは異なり、日本における本国出願・登録は不要

・日本を国際出願の指定国とすることが可能(自己指定)。

 

国際登録

国際事務局による一元的な方式審査において、出願書類に不備がなければ国際登録簿に記録。これにより各指定国への正規の出願と同一の効果が発生。

上記国際出願の出願日が国際登録の日となる

 

国際公表

原則、国際登録から6月後に、国際登録の内容が国際意匠公報(International Designs Bulletin)において公表される

※国により、国際登録後の公表延期または即時公表も請求可能

〔延期期間の例〕
 ・最長30月:EU、フランス、スイス、ドイツ、スペイン、韓国、
       トルコ、日本
 ・最長18月:シンガポール
 ・最長12月:OAPI(アフリカ知的財産機関)、ブルネイ、クロアチア、
       エストニア、スロベニア、シリア
 ・最長 6月:デンマーク、ノルウェー、フィンランド
 ・延期不可 :米国、ポーランド、アイスランド、ハンガリー、
       モナコ、ウクライナ

※指定した国の中で、最も期間が短い国に合わせて公開されるため注意。
 (例:EU(30月)と米国(延期不可)を指定した出願→延期不可)
                         =6月後公開

 

指定国での審査

拒絶の通報が可能な期間は、国際公表から6月または12月。

〔拒絶通報期間の例〕
 ・6月:EU、フランス、スイス、ドイツ、デンマーク、ノルウェー、
     ポーランド、OAPI(アフリカ知的財産機関)
 ・12月:スペイン、韓国、トルコ、日本、米国、フィンランド、
     シリア、アイスランド、キルギス、リトアニア、モルドバ、
     ルーマニア、カナダ

(※新規性を含む実体的要件の審査を行う官庁を有する国及び異議申立制度を有する国のみ12月を選択可能)

 

権利発生

国際登録は、国際登録の日から5年間有効。その後、5年ごとの更新が可能。

〔権利存続期間の例(国際登録日から起算して最短15年)〕
 ・最長25年:EU、フランス、スイス、ドイツ、スペイン、ノルウェー、
        ポーランド、トルコ
 ・最長20年:韓国、日本
 ・最長15年:米国、シンガポール、OAPI(アフリカ知的財産機関)

*国際登録の存続期間は15年ですが、指定締約国の国内法における意匠の保護期間が15年よりも長い場合には、当該指定締約国の保護期間と同一となります。
*日本での存続期間は、日本における意匠権の設定登録の日から最長20年です。

 

 

3.メリット・デメリット

メリット

  • 1出願で複数の指定国に出願でき、複数意匠(国際意匠分類の同一の類に属していれば最大100意匠)の出願もできるため、手続きが簡易です。日本では、複数意匠を含んだ国際出願は意匠ごとの複数の出願とみなされ、意匠ごとに日本の出願番号が付与されます。(米国では単一性の要件違反で認められないおそれ。バリエーションの意匠は認められる可能性あり。)
  • 無審査国であれば国際公表から6カ月、実体審査国であれば遅くとも12か月で審査結果が出ます。
    (代表的な無審査国:EU、シンガポールなど)
  • 英語、フランス語、スペイン語から出願人が選択した単一の言語で出願できるため翻訳の負担やコストを軽減できます。
  • マドプロと同様、現地代理人を通す必要がないため、コストを抑えることができます。
  • 住所変更などもWIPOに対してのみ行えばよいので、管理を一元化できます。
  • 国内で関連意匠を出願したい場合:日本を指定すると、意匠の国際公表を最長30月に延長可能なため(その他指定国による)、通常の国内意匠出願よりも関連意匠の出願時期をより長く確保できる。
  • 出願方法は日本特許庁経由とWIPOへの直接出願(郵送・FAX・E-Filing)の計4パターンより選択することが可能で、特にE-Filingを選択すると、より費用を低減することができます。

 

デメリット

  • 原則、国際登録の日から6月後(国により延長可、日本は最長30月)に国際意匠公報で公表され、登録の可否にかかわらず、意匠出願の内容、拒絶理由、拒絶理由の引例も公開されてしまいます(日本国内での意匠出願では、登録された意匠しか公開されない)。それにより、出願人に不利な状況が喚起される可能性がございます。また、日本のような秘密意匠制度(登録から最長3年間意匠を非公開)もありません。
  • 一度設定した公開延長期間は、短縮することは可能ですが、更に延長することはできません。
  • 日本語で出願を行えません。
  • 国内出願のように、1年単位での登録料納付ができません。
  • 出願時にWIPOへ料金を前払いするため、拒絶が確定した場合には、6ヶ月以内に登録料相当を返還請求する必要があります。


*[NOTE]: その他に、特に米国や韓国を指定した出願では、追加の出願書類が必要になる場合があります。
  (願書[DM-1]の付属書類の例)
 ANNEXⅠ:意匠の創作者の宣誓又は宣言書の提出用(米国)※米国を指定する場合に必須
 ANNEXⅡ:新規性喪失の例外証明書の提出用(韓国)
 ANNEXⅢ:意匠の保護の適格性について出願人自身が知り得る情報の提出用(米国)
 ANNEXⅣ:極小規模事業体であることを証する書面の提出用(米国)
 ANNEXⅤ:優先権主張に関する補足書類(韓国)

 

 

4.最後に

以上のように、ハーグ協定による国際意匠出願には、コストや管理等を軽減できるというメリットがある一方で、指定国での審査前に国際公表され、出願意匠が公知になってしまうというデメリットがあります。よって、これらのメリットとデメリットを把握した上で、最適な方法で出願する必要があります。

当所では、経験豊富な弁理士と様々な国の現地代理人との緊密な連携により、お客様の意匠を保護するのに最適な方法で、貴社の国際意匠出願をサポート致します。海外出願、または海外出願を含む日本への意匠出願、または拒絶理由への応答などについてお困りの際は、ぜひ当所へお問い合わせください。

 

 

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