(1)はじめに

言うまでもありませんが、食品には丸型、四角、円錐型等様々な形状があります。また、様々な色や形状が工夫されたパッケージに入れられて販売されています。有名な商品であると、商品名を見ずとも形状やパッケージを見ただけで分かるものもあります。食品の形状及び包装デザインは意匠権で保護することが出来ます。

当記事が食品の形状・包装に関して意匠出願を考えていらっしゃる方のお力になれれば幸いです。

(2)食品に関する意匠

食品は味と同様、見た目も大事です。どれだけ食品を美味しそうに見せることが出来るかによって、売上に関わってくるのではないでしょうか。食品分野において意匠権で保護されるものとして、食品自体の意匠と食品包装の意匠があります。意匠権で保護されるためには、「物品の形状、模様若しくは色彩これらの形状であって視覚を通じて美感を起こさせる」ことが必要です。また「工業上利用可能性」があることが必要で、商品が量産できなければ意匠権の保護を受けることが出来ません。

①食品自体の意匠

食品自体の意匠は、食品そのものに係るデザインを保護します。実際に登録されている物の具体例として、くし付のイカ、チョコレート、特徴的な形状を持つ固形カレー等があります。

★くし付いか

Aグループ(製造食品及び嗜好品)
(よっちゃん食品工業株式会社 登録意匠第1224266号)

★チョコレート

Aグループ(製造食品及び嗜好品)
(ゴディバ ショコラティエ インコーポレイテッド 登録意匠第1484401号)

★特殊な形状の固形カレー

Aグループ(製造食品及び嗜好品)
(ヱスビー食品株式会社、ベスパック株式会社 登録意匠第1452329号)

②包装デザイン

食品の形状のみならず、食品包装にも意匠権での保護が適用されます。

インスタントラーメンの包装、調味料の包装容器、納豆の容器等が具体例として挙げることができ、特殊な包装の形態や、包装の形状が一般的なものであってもそこに描かれているデザインが斬新・独創的であると認められれば意匠権で保護されます。

また、下記に挙げた醤油の包装のように醤油の鮮度を保つという点で特許権の保護を受けつつ、包装容器として意匠権を取得することでより保護が厚くなります。

★即席麺のパッケージ

Fグループ(事務用品及び販売用品)
(サンヨー食品株式会社 登録意匠第1443372号)

★醤油の包装

Fグループ(事務用品及び販売用品)
(株式会社悠心 登録意匠第1377043号)

Fグループ(事務用品及び販売用品)
(キッコーマン株式会社 登録意匠第1443689号)

★納豆の包装容器

Fグループ(事務用品及び販売用品)
(株式会社ミツカン 登録意匠第1355159号)

(3)食品・包装の模倣品対策

海外では、キャラクターやブランド品だけでなく、食品及び食品包装の模倣が近年増加してきています。食品の形を模倣するだけでなく、包装やラベルを模倣し、中身は全く違うものを入れて販売しているケースや、商標登録されたブランド名は使用せず、パッケージを似せたものが多く出回っています。

特に日本製食品は高品質故人気も高い為、包装に「日本製」と表示することや、日本で実際に販売されている食品の包装を模倣して販売すると売り上げが伸びるとのことです。

日本の食品・包装を模造した商品は、日本で売られている「本物」よりも質が劣ることがあり、製造会社全体の信用墜落にも繋がりかねません。

意匠権を取得していれば、このような模倣品に対して有効な措置をとることができ、更には、商標権が非侵害となるような場合であっても、パッケージが類似するとして、意匠権に基づく差し止め等を行使することも可能です。

(4)立体商標との比較

食品や食品包装については、立体商標の登録をすることにより半永久的に保護を受けることが可能です。また、現に、立体商標登録を受けているものもあります。しかし、立体商標の場合、食品やパッケージの形状が、単に食品やパッケージの形状を表しているに過ぎないと判断された場合は、自他商品識別力が欠如するとして登録を受けることができず、よほど特徴的な形状にするか、全国的に著名とならない限り、難しいということをご存じでしょうか。以下の登録例は、全国的に著名なことが特許庁に認められたうえで登録されたものです。一方、意匠権は、新規性・創作非容易性が認められれば、食品そのものの形状であっても登録が認められますので、立体商標の登録より登録が容易と言えます。

食品の形状等については、意匠登録により模倣品を防止しつつ、長年の使用により全国的に著名となったときに、立体商標を取得し、半永久的に形状を保護するという戦略が考えられます。

<登録例>

商標登録第6031305号(商標法第3条第2項適用)

※株式会社明治の「きのこの山」が立体商標登録されたニュースは記憶に新しいと思います。

<登録が認められなかった例>

知財高裁平成18年11月29日(平17年(行ケ)第10673号)

※一旦特許庁に登録が認められましたが、無効審判請求がなされた後、知財高裁により、その形状は和菓子としてありふれたものであり、全国的な周知性を獲得するに至っていないと判断され、登録が取り消されました。

<意匠登録例>

意匠登録第1484789号

ソフトクリームの新規な形状であり、全国的な著名を証明しなくても登録が認められます。

このほかの登録例はこちらをご覧ください。

(5)海外での意匠権取得について~ハーグ協定(ジュネーブ改正協定)とは

意匠を保護したいけれど、日本だけでなく海外でも保護申請をしたい、けれど海外の手続きはお金も手間もかかるのではないか・・・と悩んでいらっしゃる方に朗報です。2015年より日本は国際的な意匠保護条約(ジュネーブ改定協定)に加入している為、複数の締約国へ出願する際に、一つの申請手続きだけで保護を受けることが可能となっています。

日本が加盟しているハーグ協定のジュネーブ改正協定は、令和2年3月現在で、63の国と政府機関が参加しています。この条約を利用することで意匠の国際意匠登録手続きが簡便になり、海外進出する際などに大変有用です。海外にブランドを広めたい、製品を輸出したい、と考えていらっしゃる方は出願国に応じて国際登録することを検討なさってはいかがでしょうか。

詳しくはこちらをご覧ください。

(6)食品のパッケージデザインに関する重要判決

(平成28年(行ケ)第10034号,平成28年9月21日判決言渡)

以下の参考図の通り、意匠に係る物品を「容器付冷菓」とし、容器、餅、餡などからなる意匠を出願したところ、特許庁において一物品一意匠の要件を満たさないとして、拒絶審決となったものに対し、知財高裁において、「『容器付冷菓』は,社会通念上,一つの特定の用途及び機能を有する一物品であると認められ,『冷菓』の部分のみが『容器』の部分とは独立した用途及び機能を有する一物品とはいえない。」として、審決取消の判決がなされました。

<参考図>

意匠登録第1571832号

2019年1月9日に審査基準が改訂した際に、一物品・一意匠の考え方の明確化・運用の見直しがなされました。これにより、食品と一体的製造・使用・流通する食品容器は、1つの意匠として権利を取得することが可能となり、容器と食品との組み合わせの創作についても保護が受けられるようになりました。

※意匠審査基準より

(7)”HARAKENZO more は食品業界の皆様をサポートします

”HARAKENZO more では食品業界の皆様の知的財産保護に全力を尽くす体制を整えておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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