IT業界の皆様へ

(1)はじめに

20世紀後半から21世紀初頭にかけて起こったIT革命以後、IT技術の発展はなお著しく、メール、通販サービス、SNSや情報家電、そしてCloudなど、多くの人がIT技術の恩恵を受けた製品・サービスを利用しており、また、私達の生活や経済を支えるためのインフラとしての役割も担っています。また、IT技術の集大成とも言い得る「スマートフォン」の普及率は20~30代で90%超、40~50代も80%超(2019年)となっており、IT技術の利用が年々増加しつつあります。

IT業界、所謂情報サービス産業全体の売上高は、90年代から急速に成長を始め、2017年時点で売上高17.5兆円にまで成長しており、自動車やエレクトロニクスなど日本の他の基幹産業に迫る規模を誇っています。今後も需要/供給の拡大が見込まれる、最注目の業界の1つでしょう。

情報サービス産業の内訳は、ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業、インターネット附随サービス業など多岐に渡りますが、本項では、主にソフトウェア業の皆様に関連するトピックスをご紹介したく存じます。当記事が、意匠出願を考えていらっしゃる方々のお力となれれば幸いです。

(2)画像デザインに関する意匠法の大改正及び意匠審査基準が改訂されました令和2年4月1日より適用

ソフトウェアの表示画面のデザインは、そのソフトウェアの操作性や造形美を左右する重要なものです。いくら機能や価格が優れていても、画面デザインが悪ければ、ユーザーに見向きもされません。特に、近年盛り上がりを見せるスマートフォン向けアプリケーションソフトウェア市場においてはこの傾向が顕著であるといえます。

平成18年の意匠法改正で新たに保護対象となった画像デザインは、物品にあらかじめ記録された画像(機器の組み込み画像)のみが保護対象であり、その後の平成28年の審査基準改訂で、事後的にインストール等したソフトウェアの画面デザインも保護されるようになりました。これは、近年の情報通信技術の急速な進展に伴い、App store®やGoogle play®でスマートフォンの対応アプリをインストールすることが当たり前になっており、多くの先進主要国においても保護範囲としていることによります。

そして、令和元年の意匠法大改正を受けて、令和2年4月1日より、更にその保護範囲が拡大し、インターネットを介して表示される画像(物品に記録されていない画像そのもの)についても保護されるようになりました。

<令和2年4月1日以降の画像デザインの保護制度>

  • (1)画像意匠(物品から離れた画像自体)として保護を受ける方法
  • (2)物品又は建築物の部分としての画像を含む意匠として保護を受ける方法

◆意匠法改正及び意匠審査基準の改訂により、画像意匠(物品から離れた画像自体)のみの保護が可能になりました。

この改正では、サイバーモールや音楽ダウンロードサービスなどインターネットを通じて提供されるサービスにおいて使用されるGUI 等についても独占権を認め企業の開発投資を回収しやすくする目的が含まれます。

スマートフォン/コンピュータ向けソフトウェアを開発・販売する企業様にとって益々有意義な改訂になりました

<新たに保護される画像意匠の例>

→機器の操作の様に供される画像

 →機器がその機能を発揮した結果として表示される画像の例

(出典:意匠の審査基準及び審査の運用~令和元年意匠法改正対応)

※但し、機器の操作の用に供される画像(操作画像)又は機器がその機能を発揮した結果として表示される画像(表示画像)のいずれにも該当しない画像、例えば、映画やゲーム等のコンテンツについては、従来と同じく、意匠法上の意匠とは判断されません。

(4)保護対象の拡大による侵害の危険性

上述した通り、新たに意匠権が認められることとなった画像デザインについては、従来の感覚で使用に問題がないと誤認していると、他人の意匠権を侵害してしまう可能性があります。

そのような事態を避けるために、事前の先行意匠調査を行うことで、安全に使用又は権利を取得できる可能性が高まります。

(5)海外での意匠登録出願もサポート

今日のIT業界のビジネス領域に国境はなく、基本的には「無体物」である電子データであるため、インターネットを通じて簡単にデザインを模倣した製品が出回ってしまいます。特に、ソフトウェアの画像デザインのようなものだと、国内外問わず無労力でマネされて被害を受けやすいものです。

そのため、国内での意匠権取得と同時に海外諸国でも意匠出願を行うことを強くお勧め致します。海外での展開を考える際にも、ぜひ、お気軽に当所にご相談ください。

欧州・米国のように、画面デザインの保護を日本よりも先駆けて行っていた知財先進国をはじめ、近年では急速に経済発展している東アジア、東南アジア諸国、その他各国において意匠の取扱は様々でございます。意匠登録を行う方法にも、各国において必要なノウハウが存在しますので、この点はお気軽にご相談頂ければ幸いです。

また、2015年より我が国もハーグ協定に加入したことから、国際意匠登録制度の利用が可能となったため、手続面・費用面共に負担を軽くすることができます。

(6)当事務所はIT業界の皆様を応援します

IT業界では、膨大な競合製品の中から消費者の目に留まるよう、画像デザインに注力することが多いものですが、ひとたびヒットすると、それを模倣したデザインが瞬く間に流通してしまう業界でもあります。

そのため、皆様におかれましては、知的財産権の問題を意識せざるを得ない状況に直面することもあろうかと思います。当事務所では、ソフトウェア業に限らず、IT業界全体の皆様の知的財産保護に全力を尽くす体制を整えております。どうぞお気軽にご相談ください。

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意匠登録や意匠トラブルの解決にあたっては、専門家の判断が欠かせません。
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